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IT系女子ログ

3年目 Webデザイナーが、最近気になるアレコレ

脳と創造性:脳、創造、社会に共通して重要なのは、スモールネットワーク

f:id:tosssaurus:20150322003248j:plain先日から書いている脳と創造性のレポートですが、本日は第3週めです。

オンラインで大学の講義を無料で受講できるgaccoで、脳科学者である茂木健一郎さん自身が教えてくださいます。脳科学は本当に面白い分野で、脳のしくみを知ることで色々なことを客観的に見れるようになってきました。

さて第3週は、『創造とネットワーク』というタイトルです。

1. トヨタノーベル賞

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  • 実は人間がコミュニケーションをする中で創造性は育まれていく
  • 脳は一つひとつの神経細胞単体では何の機能も果たさない
  • 神経細胞が集まってネットワークを作ることで、初めて我々の意識も生まれる
  • 科学や技術における発明・発見というのは人間のネットワークの中で生み出されるものである
  • ネットワークの中でのパス回しというのが、実は創造性には欠かせない
  • 誰でも平等にアイデアを出し合い、それによる金銭的見返りをあまり求めないようなトヨタの文化は、脳科学を研究する立場すると真実により近いと思う
  • 皆が協力し合い、ネットワークを通して独創性は発揮されるんだということを分かってる人が、一番独創性を発揮できるのではないだろうか
  • 創造性は決して、一人の独創的な天才によって生み出されるものではない
  • 凡庸な方々も、ネットワークを通してコミュニケーションをとることで、偉大な発明をできるかもしれない

トヨタ式企画書術−イイタイコトを、簡潔に - アイデアログ(旧TOYOTA SOCIAL APP AWARD挑戦記)

2. スモールワールドネットワーク

  • スタンレー・ミルグラムの行った実験で、スモールワールドネットワークと呼ばれる実験がある
  • 当時インターネットなどがなかった中で、今のネットワーク科学の潮流を予見したものとして、高く評価されている
  • 例えばニューヨークから、まったく縁もゆかりもない人に手紙を出し、「シカゴのこの人に一番近いと思われる誰かに手紙を出してください」という実験をしたところ、何と6回ぐらい手紙を送ると相手に届くという結果が出た
  • つまり世界は、友達の友達の友達の友達の友達の友達、と6人たどって行くとどこにでもたどり着けるような構造をしているらしい
  • スモールワールドネットワークとは、レギュラーな規則正しいネットワークと、ランダムなネットワークの中間にあると考えられるネットワークのこと
  • ローカルな規則正しい結合と、長距離のランダムな結合とが入り交じっている、スモールワールドネットワークが人間の社会のネットワークである
  • 我々人間の脳の神経細胞のネットワークも、スモールワールドネットワークである
  • 神経細胞が近くの規則正しい結合と、遠くの結合とが入り交じることによって、人間の脳というスモールワールドネットワークができている
  • 偶有性が溢れている世の中の事象に適用するためには、どうもスモールワールドネットワークのような構造をしていなければいけないらしい
  • この規則性と不規則性が交ざっているというのが、まさに創造性を育む条件でもある
  • 脳の中のドーパミンという報酬系の物質は、意外なことに特に反応するように、人間の創造性というのは、規則性の中に時折交じるランダムさによって育まれる
  • 規則的ネットワークの中で予想のできる情報だけを交換していても、なかなか新しいアイデアは生まれない
  • スティーブ・ジョブスが言った「ドットとドットを結ぶ」という行為が、創造性を育む上では非常に大事になる
  • 例えば同じ会社の方や同じ学校の人との繋がりと、何の脈絡もない、遠い場所にいる方との関係も非常に大事になる
  • 身近な方とのある程度予想のできる繋がりプラス、遠くにいる人との予想ができないランダムな繋がりが良いバランスで交じり合うことが、人間の創造性が最も発揮される条件でもある

ネットワークが人生を変える | JBpress(日本ビジネスプレス)

スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法

スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法

 


スティーブ・ジョブス スタンフォード大学卒業式辞 日本語字幕版 - YouTube

3. 弱い絆の意味

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  • スモールワールドネットワークは、見方を変えると、強い絆だけではなく弱い絆が大事だということを意味する
  • 強い絆とは、家族やよく会う友人同士のように、非常に頻繁にやり取りをする者同士の絆のこと
  • 強い絆は、例えば価値観や暗黙知などが共有されていたりというように、何かを協力しあって行う非常に良い結合状態となっている
  • 一方で弱い絆は、普段あまり縁のない社会的にも少し離れたところにある人との絆のこと
  • 経験的この弱い絆イノベーションにおいて大事であるということが分かっている
  • スティーブ・ジョブズMac作った際、二つの離れたコミュニティの間の弱い絆を通して創造性を発揮した
  • 当時まったく関係がなかった、カリグラフィーとコンピュータカルチャーとの、2つのコミュニティ間の弱い絆を自ら作り、それを創造性に活かした
  • 3M(スリーエム)という会社は、讃美歌集にしおりをはさむということと弱い接着剤とを結びつけポスト・イットという大ヒット商品を生んだ
  • 1つのことに深い知識を持つ一方で、幅広いことについても関心や経験があるような、T字型の人がイノベーションを起こす人だと言われている
  • 一般教養と専門教育のように、弱い絆と強い絆が絡み合うことによってイノベーションが起こる

弱さこそ、本当の強さかもしれない。ビジネスの成功は「弱い絆」が生み出す | U-NOTE【ユーノート】

未来を切り開くスキルとしての他家受粉: DESIGN IT! w/LOVE

4. Groomingに関するDunbarの説

  • 相手の心を読み取るということは、人間だけに与えられた非常に特別な能力と言われている
  • サルがお互いに毛づくろいをするグルーミングをすることによって、体の調子を整えたり仲間同士の絆が深まり、トラブルがあると助け合うという、野外での観察事実がある
  • ロビン・ダンバー教授は、脳の大きさが2倍になったサルは2倍の仲間と毛づくろいをするという、きれいな相関関係がある事実を発見した
  • サルの行う毛づくろい グルーミングは、人間の会話にあたる
  • サルの脳が大きくなると毛づくろいの仲間も大きくなる、というダンバーの法則を人間の脳の大きさに当てはめると、約150人の仲間と毛づくろい(会話)をすることができることになる
  • 人間がお互いにクリスマスカードを何人とやり取りしているかという調査をしたところ、確かに150人ぐらいのところに平均値があるらしい
  • ちなみに、人間の会話行動は様々な科学的な研究結果から、多くの時間がその場所にいない他人の噂話に費やされていることが分かった
  • シャーデンフロイデと呼ばれる、他人の不幸を喜ぶこと、他人の不幸は蜜の味というような話をすることが多いということも観察事実として知られている
  • 人間は、他人に起こっているトラブルについて話し合うことで、不測な事態に備えてシミュレーションするために、どうやら脳は、他人の不幸話をするのが好きなようにできている
  • 数学の計算なんかよりも友人関係のバランスを取ることの方が難しいと言える

「ダンバー数」にFacebookで挑戦 « WIRED.jp

こころ学 - 脳の省エネ大作戦

5. Absorptive capacity

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  • 記憶というのは、人間の脳とコンピュータが最も異なる事のひとつと考えられる
  • コンピュータの記憶というのは、各アドレスにメモリが蓄えられ、 メモリがいっぱいになったらそれ以上蓄えることはできない
  • 人間は、例えば英語の単語を1000単語覚えている人と、6000単語覚えている人が新しい単語に接した時に、どちらがより効率良く新しい単語を覚えられるかを考えると、既に英語の知識がたくさんある人の方が、新しい単語をより多く覚えることができる
  • 人間の脳は記憶を関連付けて収納する
  • レム睡眠Rapid eye movementという、目が急速に動くタイプの睡眠時に、脳は記憶を整理しているらしく、その記憶の整理というのは、既に蓄えられている記憶と新しい記憶を関連付けて収納している
  • つまり、ある分野について既に多くのことを知っている人は、その分野についての新知識を効率よく吸収することができる。これが、アブソープティブ・キャパシティという概念の核心にあたる部分
  • アブソープティブ・キャパシティとは、会社がイノベーションを起こす時に、関連分野の新しい技術・情報・知識をどれくらい効率よく吸収できるものか、ということについての実証的な研究に基づく概念のこと
  • 新しい分野、技術に接した時にどれくらい吸収できるかは、その分野について過去にどれくらい経験値を積んで、社内でどれくらいR&D(研究と開発)を積み重ねてきたかに比例する
  • 自分たちがある程度やっていたことに関わることでなければ、新しい技術に出会ってもそれを評価することができない、取り入れることができない
  • 偶然に何か幸運に出会うセレンディピティに気づくためには、普段から色んなことについて学び、 考え、経験を積んでいなければならない
  • 努力ない者に、セレンディピティ 偶然の幸運は訪れない

「イノベーションと起業に必要な絆」 - みんかぶマガジン

使える経営学

使える経営学

 

6. まとめ

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  • 人間の社会も、脳の神経細胞のネットワークも、スモールワールドネットワーク
  • 弱い絆と強い絆の両方が大事である
  • 会話のようにお互いの絆を高め合うことは、脳のリソースを食うことである
  • 吸収する能力というのは、それまでの努力、記憶、経験による
  • 実在の人物、見たことがない著名人、そして例えば物語上の架空の人物たちを、どのように脳の中で処理しているか研究したところ、その人について想う時間をどのくらい費やしているかによって、脳のコアとなるネットワークの活動が変わってくる
  • 例えシンデレラのような架空の人物でも、その人物のことを想像して、ありありと思い浮かべることができれば、実は現実の人物と同じくらいの脳活動が段々見られるようなってくる
  • ソーシャルネットワーク時代、インターネット時代に人との絆をどう考えるかということについての、大変大きな示唆があるように思う
  • 元々人間の脳は、多くの情報が束になることによってリアリティを感じている
  • 創造性というと1人で全部やらなければいけないと、肩に力が入ってしまうかもしれないが、実際には様々な人と行き来する中で創造性は育まれていくものである
  • つまり、創造性というのは 一つのネットワークの中のハブのようなものである

レポート(テーマ:アブソープティブ・キャパシティ)

第3週は、創造とネットワークについての講義でした。身近な話題が多かったので、大変面白かったですし、考えさせられました。

アブソープティブ・キャパシティとは

今回は、5. Absorptive capacityで学習したアブソープティブ・キャパシティについて少し調べてみました。
これは、 Cohen&Levinthalという方により1990年に提唱された経営学用語です。
ちなみに、"アブソープティブ・キャパシティ"とカタカナで検索してみたのですが、あまりヒットしませんでした。日本では"吸収能力"などとして使われているようです。"Absortive capacity"と英語で検索すると、元になった論文がでてきましたので、Google先生に手伝ってもらいながら読んでみました。

その中から気になった部分をご紹介します。

The more effort applied to learning the better the subsequent retrieval. Practice makes perfect. A diverse background provides a more robust basis for learning in uncertain situations and stimulates creativity by associating to more linkages.

by Cohen & Levinthal - Absorptive Capacity

沢山の努力があった程、検索の学習により良く適用される。習うより慣れろ。多様な背景は、不確実な状況下での学習のための、より強固な基盤を提供し、より多くのつながりに関連付けることで、創造性を刺激する。(トミー訳)

私は、この部分を「未経験のことでも、これまでの知識や経験に関連付けて習得できるので、広い知識をもっていればより効率よく吸収できる。また、どう行動すべきか(創造性)もひらめきやすい。」と解釈します。
アブソープティブ・キャパシティは会社の吸収能力のことですが、茂木さんもおっしゃっていたように、個人にも当てはまりますね。

個人に見るアブソープティブ・キャパシティ

確かに業務にしろ、英単語にしろ、何も知らない人より、既に知識のある人の方が覚えるスピードも量も理解も早いです。なぜなら、人間は新しい知識と、既に記憶している知識とを、簡単に関連付けることができるからです。
歴史語句などの暗記攻略法として、「年表や物語、時代背景などと関連付けて暗記すれば、いざ思い出そうとした時は芋づる式に記憶が引っ張り出される」と、よく先生から聞かされていたのを思い出します。歴史に詳しい人ほど、簡単に新しい語句を覚えてしまったりするんですよね。
学生のころから既にアブソープティブ・キャパシティを体験していたわけです。

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未経験の新入社員に置き換えて考えると、アブソープティプ・キャパシティが低い分、不利だと言えます。また、以前記事にしましたが、不慣れなことを行っているときは脳がフル回転していますから、業務を一人前に行うまでに時間がかかることは至極当然と言えます。反対に、経験者と同じように行動していては遅れをとってしまうのも当たり前です。

上達や習得の効率を良くするアブソープティブ・キャパシティを高めるには、関連させるだけの知識や経験があればあるほど良いので、入社して1年目にどれだけ意識して勉強できるかが、2年目の知識吸収能力を決めるといっても過言ではないでしょう。
多少遅れを取っていても、努力し続けていれば必ず成果は出ると、脳科学的にも経営学的にも、そして経験則的にも、言えるわけです。

以前取り上げた"成功曲線"はこのアブソープティブ・キャパシティの概念と共通しますね。私もまもなくWebデザイナー2年目へ突入しますが、はやく曲線③の波に乗りたいところです。

参考資料

Cohen & Levinthal - Absorptive Capacity

組織の吸収能力とロックアウト(pdf)